まるしぶ流ハイスピードドライビングのコツ



PART2

ライン取りのお話


前回に引き続き、やはり基本はドライバーデバイスのチューンということを主題にして、
貴方はどう考え創り上げていくか?と言う事に重点を置いて考えてみました。


・・・ある日、あるサーキットのドライビングスクールへ顔を出したときの事、参加者の方々にライン取りの事をもっと知りたいとの意見が多い事に気がつき、文章でどうすれば上手く伝わるかを
私(まるしぶ流)なりに考えてみました。

ライン取りについては雑誌などでも、M選手はFFでこういうライン、T選手はFRでこういうラインなんていう記事があります。

しかしながら、これらは凄く微妙なレベルで語られていることが多く、慣れないコースへ実際にコースインしてみたところ、さながら新宿地下街に降りて先日テレビで紹介していたチョッと気になる店を探す事と同じくらい、M選手やT選手のラインの違いなど、どこにも見当たらない事に気がつく事でしょう。

コース上に出たとたん、先程の選手の話は忘れる必要に迫られます。

結局新宿でも適当な店で済ましてしまうのでした。



同じように、上空から見たコース図に、ペンでライン取りを書いた説明も、大まかなヒントにはなりますが、場合によっては間違った伝わり方をする恐れもあります。

これらはなんとなくの目安にはなっても、自分のライン取りや走りを決定付けていく材料にはなりにくいものです。


どう自分で決定付けていくか?

慣れないコーナーで、どうやってライン取りを決めていくか?

チョッと気になる店も自分の足で探し、たどり着けば、次に行く時は道に迷う事も少なくなる事と思います。



   例えば富士の100Rのようなコーナーにて


大まかな手順としては・・・

1.        普通のコース図

2.        大まかな景色

3.        とりあえずのアウトインアウト

4.        後半部分を決めていく

5.        それに対する進入を決めていく

6.        全体のバランスを取っていく

7.        更に微調整

8.        最終的にポイントを決める


と、これだけの事なので簡単そうです。



各ポイントの詳細は・・・




1.       上空から見た、いわゆる普通のコース図で大まかにレイアウトを確認します。
富士の100Rだと左のAコーナーを抜けた次の右コーナー、そして左のヘアピン・・・と言う程度の確認です。



2.       コースインして、ゆっくりとコーナーの全体像を確認。
路面の継ぎ目やキズ、縁石の位置や切れ目、タイヤバリアや、ガードレールなどいろんな情報をおおまかに確認しておきます。



3.       コーナー入り口の最もアウト側から見たイン側の景色を確認、そのイン側へ移動しそこから出口の景色を確認。
ここでも路面の継ぎ目やキズ、縁石の位置や切れ目を確認しながら大体のアウトインアウトで走行します。




4.       次に少しペースを上げ、アウト一杯から適当な進入ラインを取りつつイン側へ寄り、出口の景色に重点を置いて加速ラインを決めていきます。
イン側の加速を始めるポイントの目印を大体決めておき、加速に伴いステアリングの舵角を徐々に緩めながらアクセルを踏み直す事無く、出口で最も外側へ寄る位置の付近に目印を決めていきます(コーナー脱出ポイントを決める)。
目印は縁石の切れ目やタイヤバリアの端等の何かを自分で決めていきます。




5.       徐々にペースアップし、速い進入スピードから先程決めた後半のラインへスムーズにつなげる事が出来るよう、いくつかの進入ラインを試していきます。
進入ポイントの決め方は、なるべく速いスピードを保ったまま、スムーズかつ出来るだけ向きを変えて後半部分につなぐ事が出来るラインを描けるポイント。
ここでも進入を始める付近の目印を決めておきます。さらに進入時のアウト側、富士の100Rで言えば、コースの最も左端からインへよっていく、ターンインのラインをコース上に描くイメージを持ちます。




6.       さらにペースアップ。
速いスピードで進入し、無駄なく向きを変え、より早く加速態勢を取れるラインを模索していきます。
この時、どこにC.Pを決めていくかは、なんとなく上手く走れたと思えるライン上にあった縁石の色やキズなどを憶えておき、その近辺を前後させ、さらに全体のバランスを取りながら決めていきます。
最も気をつけることは後半でのスムーズなコーナー脱出が行えているかと言う事です。




7.       後半部分において、舵角が大きくなる、またはアクセルを戻さざるをえない場合は、出口ラインのRが小さく、進入でインに早く着きすぎているか、進入スピードが速すぎる、向きが上手く変えられていない等の傾向が考えられます。

逆にコース幅が余る、または舵角に余裕がありすぎてGが抜けすぎている場合は、進入ラインが急すぎる、スピードが遅いなどの傾向があります。 (勢いのある人の場合、このパターンは少ないかもしれません)

後半部分でどんな状況だったかを憶えておいて、次の周その次の周と、アプローチの仕方を少しずつ変えてベストと思えるラインを見つけていきます。

その際、あらかじめ決めておいた目印に対して、どのあたりを通っているかでラインの微調整を行うのです。





8. 全体的なバランスが上手く行き出し、ベストと思えるラインが取れだしたら、進入・C.P・出口の各ポイントでの目印を順に追っていき、入り口から出口までのなめらかなラインをイメージしながら、そのラインを外さないよう更に速いスピードでのチャレンジを試みていきます。

自分で作り上げてきたラインと走りにある程度自信がついてきたところで、全開アタックの開始です。

この後の処理は微調整だけで済むはずです。





ここまでの構築方法で、自分なりにベストと思えるライン取りの考え方や行っている事が、果たして正しいのか間違っているのかは、ラップタイムと車の安定度が教えてくれるでしょう。

車が安定しているにもかかわらず、周回を重ねる毎にラップタイムが短縮していく事があります。
それは、正しい事を行った証拠です。



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さらに、実際のハイスピードドライビングでは、様々な現象の中でのコントロールを行う事になりますので、誰よりも速く走ることが出来るラインとなると当然複雑な話になってきます。


その他、ラインを決める上でのヒントとしては・・・


ツーリングカーの場合、車重が1〜1.5トンもあり、例えば減速しながらのターンインでは、フロントアウト側のタイヤにかかる負担はかなりのプレッシャーだと言う事が理解できます。

普段は4本なのにその時は正味1本で頑張らないといけない訳です。

操作を行う時、重さが1〜1.5トンもある重量物を運んでいる、と言う意識を持つと、スムーズに走る事がなぜタイムに影響するのか、という事が見えてきます。



同じように急激なライン取りの変更も間違った操作といえます。

限界付近でコーナーリングしている車は、急にラインを変えられない、ハズなのです。

そして、車が行きたがっている方向を妨げないよう、向きを変えてやるという意識を持ってみましょう。

分かりやすく言えば、急なステア操作はほどほどに、と言う事です。

更に付け加えるなら、急なステア操作はミスした時のリカバリーのために備えておくものと考えるべきでしょう。




さらに、進入ポイントでラインを外しやすい現象として、ステア操作を行ってから実際に車が向きを変え始める時間の差、タイムラグがあり、この大きさは車両の特性やセッティング、またアクセルを開けているか閉じているかによっても違ってきます。

ステアリングの初期応答性、等と表現したりしますが、自分なりのターンインポイントを決めていても、車両を乗り換えたり、セッティングやタイヤを変更した時、この応答性が変わり、走りがギクシャクする原因となることがあります。

いずれにしろ、ターンインポイントの少し手前からそれを見計らってステア操作を行う必要があります。




また、ラップタイムはコーナー立ち上がりがとても大切だと良く言われています。

スムーズに早くアクセルを開け始め、速いスピードでコーナーを抜ける事により、次のコーナーまでのストレート区間を速く駆け抜けよう、という事なのです。(そんなこたぁ、もう知ってるって?)

スムーズに速く立ち上がる事で、安全マージンを取りつつタイムを短縮していく事が出来るという訳です。

よって、ライン取りを決めていく時に、後半部分を重視して決めていくのはこういう理由からであり、ブレーキングを奥にずらしていく話は、ずーっと後の事になる訳です。




また、安全マージンを取りつつ速く走れるようになる事の重要性は、更なるリスキーなチャレンジを行い、更にラップタイムを短縮することを可能にするため、ということで理解できないでしょうか?




そしてもうひとつは、コース幅を最大限に利用しているかという事です。

誰よりもコース幅を広く取ることで、同じコースでもコーナーのRを大きくして速度を稼ぐと言う考え方で、基本中の基本です。

ただし、コーナーのレイアウトによっては当てはまらない場合も多々あります。

また、立ち上がりの縁石が波打っている場合等、トラクションの有効度を考えると、アウトいっぱいまで使ってその縁石を通るべきか避けるべきなのか、ドライバーの判断の分かれるところです。




このような事を色々と考えていくと、たかがライン取りと、つい思いがちなのですが実に奥が深く、コースサイドでドライバーのライン取りを見れば、そのレベルの判断は一目瞭然であり、また、ラップタイムを削っていく上で、かなり重要な項目である事が分かります。





コース上のポイントを自分なりに決めて走る事の重要性。

そのテクの延長線上には、例えば年に一回しか開催されない十勝24耐久レースでの夜の濃霧の中、ほとんど何も見えないような条件下でも、ほんのわずかに見える入り口と出口の目印さえ自分のものにしてしまえば、昼間と同じようにコース幅を目一杯使って、バカみたいなペースで走れたりすることも可能になる訳です。



しかしこれは、何か特別な才能が要求されていると言うよりも、その辺りのコツをつかんでいるだけの事なのかも知れません。


どんな人でも初めて行く新宿地下街で、迷わず目的の店にたどり着けたわけではないと思うのです・・・





次回、ライン取り続編

複合コーナーのライン取りのコツ


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